第3回 空き家になった実家を空き家のままにしておくことの危険性,空き家の活用方法

「衣・食・住」というように「住まい」は人生と切っても切れない関係にあります。このコラムでは,人生の様々な場面での「住まい」いわゆる不動産に関する法律問題について解説していきたいと思います。

親が介護施設に入所したり親が亡くなったりして,誰も住まなくなった実家。
もちろん,親族のどなたかが実家の近くに住んでいれば管理も行き届きますが,遠方に住んでいる場合にはそうはいきません。

最近,このように空き家になった実家の問題点,活用方法について様々な情報があり,行政もその対策に頭を悩ませています。全国で約820万戸もあるといわれる空き家について,国土交通省は,平成26年,「空家等対策の推進に関する特別措置法」を制定しています。
今回のコラムでは,空き家になった実家を空き家のままにしておくことの危険性,空き家の活用方法について解説していきたいと思います。

空き家の危険性

誰も住まなくなった実家を空き家のまま残しておくことの危険性としてあげられるのが,①倒壊,②放火・失火,③不法投棄などです。

①倒壊

みなさんは,人が住んでいる状態の家と,人が住んでいない状態の家のうち,どちらが早く劣化するかご存知でしょうか。 使うから傷むのであって,だれも住んでいなければそんなに傷むことはない,と思う方がいらっしゃるようですが,答えは逆です。 誰も住んでいない家というのは驚くほど早く傷みます。
誰も住んでいないと人の出入りがなく,居室内の空気が入れ替わることも少なく湿気が籠りやすくなります。そうすると,壁や床などのかびなどの原因になります。また,水を使うことがないので排水管につまりなどが発生しやすくなるようです。また,これは私が実際に経験した事例ですが,ちょっとした雨漏りなどであれば住人がいればすぐに気づき対処できますが,誰も住んでいない場合そのまま雨水が滞留し天井が崩落する,なんていうこともありえるのです。
また,建物の倒壊,庭木の倒木などによって近隣住宅の建物の損壊や住人が怪我をしたような場合には,土地工作物の所有者責任として損害賠償義務を負うことになります(民法717条)。

②放火・失火

火災の原因に関する総務省消防庁の発表によると,火災の原因のうち,放火・放火の疑いをあわせると18.9パーセントを占め,たばこ(11.8パーセント)を大きく上回ります。
(http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/fieldList8_3.html)
誰も住んでいない家には,郵便受けに詰まったチラシ広告や不法投棄された家具などがあるため放火の格好の標的にされることになります。
また、失火が原因で近隣に延焼したとしても,失火責任法により重過失がなければ損害賠償責任を負うことはありません。しかし,失火の危険性を認識しながら回避する措置を怠っていれば,重大な過失があったとして近隣への延焼について損害賠償義務を負う可能性はあります。

③不法投棄

誰も住まず管理の行き届いていない家は,不法投棄の巣窟にもなります。誰かが小さなごみを捨てていけば,だんだんと大きなごみが投げ込まれ,そのうち捨てるにも費用がかかるテレビや冷蔵庫,洗濯機,最後には車まで捨てられている,そんな空き家を見たことはありませんか。
もちろん,不法投棄することが悪いのですが,不法投棄された結果,悪臭などの周辺環境への悪影響が出れば所有者としての管理責任を問われる可能性もあります(民法709条)。

誰も住んでいない実家をそのままにしておくとこのように民事上の損害賠償責任を負う危険性があるのです。
さきほどご紹介した「空家等対策の推進に関する特別措置法」では,空家について市区町村が調査できる権限を持ったり,さらには倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態,著しく衛生上有害となるおそれのある状態などになっている空き家(法律上は「特定空家等」といいます。)については除去や修繕などの措置の助言や指導,勧告,さらには命令ができるとされています。そして,これらの行政処分に従わない場合には,建物の底地としての固定資産税の優遇措置が受けられなくなります。つまり,更地と同じ評価の固定資産税を払わなければならなくなるので,税法上も不利益を被ることになります。

 

空き家の活用方法

では,このように誰も住まなくなった実家をどのように活用すれば良いのでしょうか。
まず,建物があるから傷むし,放火される危険もあるのだから,とりあえずいったん建物を取り壊すという方法が考えられます。
しかし,この方法は将来的に大きな税負担を抱えるリスクがあります。というのも,建物のない更地の固定資産税は,建物がある場合の約6倍にもなるからです。建物のない更地は活用方法がいろいろと考えられるので,不動産としての価値が高くなるためです。 したがって,安易に建物だけを取り壊すことは一時的な対策にならざるをえないことが多いでしょう。

つぎに建物を賃貸に出すことが考えられます。
しかし,親が住んでいた実家となれば,築年数も経過していることが多く,間取りや仕様が現代のものにマッチしていないことが多いでしょう。そうすると,賃貸に出すためにはリフォーム費用がかかり,賃貸による投下資本を回収するには長い時間を要することになります。また,親が亡くなって相続が発生している場合で相続人が複数いると,だれが実家を相続し賃貸人になるのか,遺産分割でもめる可能性もあります。

そこで,誰も住まなくなった実家を売却するという方法が考えられます。
売却による処分であれば,遺産が実家しかないような場合でも実家を相続する相続人が代償金を支払う必要もありません。売却代金を相続人間で分割すれば足りるからです。

慣れ親しんだ実家を売却するには心理的な抵抗もおありかと思いますが,このように誰も住まなくなった実家の活用方法としては売却も有効な選択肢になると考えられます。

もっとも,親が重度の認知症などにより介護施設に入所した結果,誰も住まなくなった実家を売却するという場合には成年後見人が家庭裁判所の許可を得て売却するなど一定の手続きが必要になる点には注意が必要です。

この記事を書いた人

吉山 晋市(よしやま しんいち) 弁護士法人みお綜合法律事務所 弁護士
大阪府生まれ 関西大学法学部卒業
弁護士・司法書士・社会保険労務士・行政書士が在籍する綜合法律事務所で,企業法務,不動産,離婚・相続,交通事故などの分野に重点的に取り組んでいる。

弁護士 吉山 晋市

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