第4回 不動産を売却する際の注意点について
第1回から第3回までのコラムでは,住宅ローンの支払いが困難になったり,税金の滞納で差し押さえをされたりしたときの不動産の売却,相続した実家の活用方法の一つとして売却について,お話をしました。

 そこで,第4回目のコラムでは,不動産を売却する際の注意点について解説していきたいと思います。

売主としてどのような義務を負うか

不動産の売買契約は,売り主の「売りたい」という意思表示と買い主の「買いたい」という意思表示とが合致することによって成立します。

この売買契約の成立によって,買い主は売買代金の支払い義務を負いますし,売り主は目的不動産の所有権を移転する,引渡しをする義務を負います。

もっとも,売り主は目的不動産を引き渡せば終わりというわけではなく,売り主の義務は所有権移転,引渡し義務にとどまりません。そこで,所有権移転,引渡し以外に売り主がどんな義務を負うのか見ていきましょう。

売主の説明義務

もし,あなたがある不動産を購入したところ,購入後に当該不動産に建築制限があることがわかって将来建て替えができないことが明らかになった,とか,購入後に雨漏りすることがわかった,としたらどうしますか?当然,「ちゃんと売り主が説明してくれていたらこんな不動産は買わなかったのに!」と言いたくなるでしょう。

不動産の売り主は買い主に対して不動産の状況について説明する義務を負います。特に中古物件の場合には,経年変化による損耗が生じていることがあるので,その状態を買い主に伝え,それを買い主が了承したうえで購入する必要があります。

具体的には,「物件状況等報告書」に,売り主が知っている事柄を記入して説明することになります

(書式例 https://www.mlit.go.jp/common/000026648.pdf)。

売り主が知っていることをあえて隠して買い主に説明しなかったことで買い主に損害が発生したような場合には,売り主は買い主から説明義務違反による損害賠償や解除を求められることがあります。

瑕疵担保責任

瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)とは,売買の目的物に隠れた瑕疵があったときに売り主が負う責任のことです(民法570条)。買い主は,売り主に対して瑕疵担保責任を追及して損害賠償請求や契約の解除を求めることができます。

ここでいう「隠れた」とは,契約の際に買い主が目的物に瑕疵があることを知らなかったこと(善意),知らなかったことについて過失がないこと(無過失)が必要です。つまり,売り主が説明してくれなかったから知らなかった,だけでは足りません。買い主自身が少し調べたら瑕疵を知ることができた場合には買い主の無過失とはいえません。

また,「瑕疵」とは,その目的物が通常有すべき品質や性能を欠くことをいいます。「瑕疵」には,雨漏りなどの物理的な瑕疵だけでなく,目的不動産内で自殺があった,目的不動産の近隣が暴力団の事務所があったなどの心理的瑕疵も含まれます。

 

両者の関係

 このようにみると売り主の説明義務違反による債務不履行責任と瑕疵担保責任は同じようにみえます。

 しかし,瑕疵担保責任は,引渡しから10年で瑕疵担保責任は時効によって消滅しますし,買い主が瑕疵を知ったときから1年で除斥期間の経過により消滅します。これに対して,説明義務違反による債務不履行責任の場合には権利を行使できるときから10年で時効によって消滅します。

 また,説明義務違反を理由に買い主の売り主に対する損害賠償請求が認められるためには売り主の故意または過失(瑕疵を知っていたのにあえて隠した,瑕疵を知っていて説明できたのにしなかった)が必要であるのに対して,瑕疵担保責任を理由にした損害賠償請求では売り主の故意や過失は不要です。すなわち,売り主が瑕疵について知っていなくても瑕疵担保責任を負います。

 

引渡し・登記の移転

売り主の引渡し,登記の移転は,買い主の代金支払いと同時に行います。買い主が住宅ローンを利用する場合には,不動産売買の決済は銀行で行うのが一般的です。住宅ローンを貸し出す金融機関の融資実行が確認できたら,売り主は所有権移転登記に必要な書類一式とともに不動産の付属設備(給湯器,浴室乾燥機や食洗機など)の取扱説明書,鍵を引き渡すことになります。

 

契約解除による義務および損害賠償の範囲

 もし,売り主の説明義務違反や瑕疵担保責任を理由にして,売買契約が解除された場合,売り主はどのような責任を負うのでしょうか。

 まず,いずれの場合も契約が解除されたことにより契約を締結する前の状態に戻す,原状回復義務が生じます。これにより,売り主は買い主から受け取った売買代金を返還する必要があります。

 瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求では,売り主の無過失責任なので損害賠償責任を限定的に考えるのが一般的です。そのため,損害賠償責任の範囲としては瑕疵がなければ買い主が受けたであろう利益までは含みません。

これに対して,説明義務違反による債務不履行責任の場合には,売り主の故意や過失があることからすると,代金の返還にとどまらず,きちんと売り主が説明義務を果たしていれば買い主が受けたであろう利益まで損害として認められる可能性があります。

 

不動産の売却は仲介業者に委託して任せきりになることが多いと思いますが,最終的にこれらの責任を負うのは売り主になりますので,売り主としての義務や責任にかかわることについてはご自身できちんと確認するように気を付けましょう。

この記事を書いた人

吉山 晋市(よしやま しんいち) 弁護士法人みお綜合法律事務所 弁護士
大阪府生まれ 関西大学法学部卒業
弁護士・司法書士・社会保険労務士・行政書士が在籍する綜合法律事務所で,企業法務,不動産,離婚・相続,交通事故などの分野に重点的に取り組んでいる。

弁護士 吉山 晋市

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