第10回 民法(債権法)改正が不動産取引全般にどのような影響を与えるのか
 前回のコラムまでは,不動産賃貸借契約や不動産売買契約など不動産取引におけるトラブル,法律問題についてお話をしてきました。コラムの内容に応じて民法(債権法)の改正について触れることもありましたが,今回のコラム以降では,民法(債権法)改正が不動産取引全般にどのような影響を与えるのかについて解説していきたいと思います。

 

民法(債権法)改正とは

 民法は国民の経済や生活に関する基本法で、1044条もの条文からなる大法典です。

 ところが,現在の民法は明治29年,今から約120年前に制定された法律です。戦後,親族相続法については全面的に改正されたものの、債権法の分野はこれまで大きな改正はありませんでした。しかしながら,民法制定以来の社会・経済の変化への対応が求められているとともに、解釈が分かれていた条文の文言についても判例が蓄積されて一般的な理解として浸透した分野も少なくありません。

 そこで,これまでの判例や解釈を明文化しつつ,難解な法律用語を避けわかりやすい言葉で制定する民法(債権法)改正法案が通常国会で可決され,平成29年6月2日に公布されました。

 改正された民法(債権法)は,公布の日から起算して3年を超えない範囲内である,平成32年(2020年東京オリンピックが開催される年ですね。)4月1日の施行が有力と言われています。このように,公布から施行までに間があるのは,民法(債権法)が国民経済の基本法であり広範囲に影響が及ぶことから,時間をかけて世の中に周知する必要があるためです。

 

債権法とは

 債権とは,人に対してモノの引き渡しを求めたり,金銭の支払いを求めたりする請求権のことです。この債権は契約によって発生するものであり,債権法の改正とは、契約に関するルールの改正です。

不動産取引においても,不動産売買は,買主が目的不動産の引き渡しを求めたり,売主が売買代金の支払いを求めたりする債権を発生させる契約です。また,不動産賃貸借においても,借主が目的不動産の引渡しを求めたり,貸主が賃料を請求したり,借主の保証人をつけたり,不動産所有者が管理を委託したり,様々な債権が発生します。

そのため,今回の民法(債権法)改正は不動産取引に大きな影響を与えることになりますので,3年後に施行されるまでにしっかり改正点について理解しておいていただきたいと思います。

 

消滅時効期間の改正

 民法(債権法)改正により、消滅時効に関する規定が変更されました。

 この変更に伴い,不動産賃貸借契約における賃料債権の時効管理について、注意が必要となります。

《改正前》

 改正前の民法では,賃料の消滅時効期間は、賃料を請求できるときから5年間とされていました(改正前民法169条)。改正前民法では,請求権の種類によってさまざまな消滅時効期間が設けられていました。例えば,医師の報酬は3年とされているのに対して,弁護士の報酬は2年とされていました。

《改正後》

 民法(債権法)改正では,請求権の種類によって消滅時効期間を区別する合理的理由はないとして、契約によって生じた請求権の消滅時効期間を統一しました。

 

 すなわち,①債権者が権利を行使できることを知ったときから5年間,②債権者が権利を行使することができることを知ろうが知るまいが、客観的に権利行使できるときから10年間の経過をもって時効消滅するとされました(改正民法166条1項)。

 一般的には,賃貸人は賃借人に対して賃料を請求することができることは知っているので、①の5年間が消滅時効期間となります。

 もっとも,相続人が被相続人から賃貸人としての地位も相続したときに賃借人に賃料の滞納がある場合には、②によって客観的に権利行使できるときから10年の経過によって時効消滅するケースも想定されますので注意が必要です。

 

時効消滅を食い止めるために

《改正前》

改正前民法では,債権者が「権利の上に眠っていない」ことを示すために,裁判上の請求,支払督促,調停申立て,催告をすることのほかに債務者による債務承認があれば時効の進行を止めることができました。

《改正後》

民法(債権法)改正では,上記以外に新しい制度が創設されました。

すなわち,権利について協議を行う旨の合意が書面でされたときは,民法が定める期間内は時効が完成しないという,協議による時効の完成猶予(改正民法151条)が新設されました。

 

法定利率について

《改正前》

賃料などの金銭債務の支払が滞ったときに発生する遅延損害金について、これまで法定利率は、年5%で固定されていました(改正前民法404条)。

《改正後》

低金利時代が長引く昨今,年5%の法定利率は高すぎるとの意見から,改正民法では年3%に引き下げられるとともに,3年ごとに法定利率を見直す変動制とする旨の変更がなされます(改正民法404条)。

したがって、賃貸借契約において、遅延損害金の利率を一定にしておくためには、約定によって遅延損害金の利率を定めておくことが必要となります。

 

以上のように、賃料に関係のある消滅時効期間,法定利率だけでも大幅な改正がありました。

次回は、特に不動産賃貸借契約においては保証人を必要とすることが多いことから、保証人に関する民法(債権法)改正の要点と、これらが不動産取引に与える影響について解説していきたいと思います。

新しい民法(債権法)の施行は3年先とはいえ,いざ施行されれば知らなかったでは済まされません。特に不動産賃貸業を行なわれている方は、契約書の見直しなど今からしっかりと準備することが必要だと思います。

                 以上

この記事を書いた人

吉山 晋市(よしやま しんいち) 弁護士法人みお綜合法律事務所 弁護士
大阪府生まれ 関西大学法学部卒業
弁護士・司法書士・社会保険労務士・行政書士が在籍する綜合法律事務所で,企業法務,不動産,離婚・相続,交通事故などの分野に重点的に取り組んでいる。

弁護士 吉山 晋市

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